大都市にはたいてい大きな川があり、雨が降って川に流れ込んだ水を浄化して利用しています。しかし人口150万人がくらす福岡地方には大きな川がなく、昔から水不足に悩まされてきた都市でした。 そこで近くの筑後川から、80mもの標高まで水を汲み上げ、25kmもの長さで水を輸送しています。これは「福岡導水」と呼ばれ、30年以上前から利用されています。筑紫野市にある天拝湖(別名:山口調整池)は、水不足の場合に備えて平成11年につくられた人工の湖で、貯水量は福岡ドームの約3杯分。福岡地方のウォーターサーバーとしての役割を果たしています。 蛇口をひねって出てくる水は、その裏側にたくさんの知恵と工夫が潜んでいます。
「11月18日は土木の日」 「土木」という漢字を解体すると、十一、十八となることと、土木学会の前身にあたる「工学会」の創立記念日が明治12年11月18日であることから、制定されました。 土木の日の前後には、全国で、土木技術および土木事業に対するご理解を深めていただくためのイベントが数多く開催されています。この機会にぜひ土木の世界をのぞいてみませんか?
森林資源に恵まれた日本では、暮らしの中のあらゆるものに木材を活かしてきました。例えばそのひとつが木橋ですが、その中でも最も有名なのが山口県岩国市に架かる錦帯橋で、橋長193mの5連の橋のうち中央の3橋は35mをひと跨ぎする大きなアーチ橋です。ただし木材はまっすぐであるため、それ自身でアーチの曲線を作り出すことはできません。そこで、多数の木材を少しずつ角度を変えて重ね合わせるという複雑な構造を有しています。このような形式の橋は世界で他に例を見ません。今地元では、この錦帯橋を世界遺産に推挙しようという取り組みが進められています。この世界に誇る錦帯橋の技術をより多くの方に知っていただきたいと思っています。
写真は歩道のよく見かける光景です。さらによく見てください。横断歩道を渡る際の歩行者踏込ブロックが赤茶色ですね。これは景観に配慮しているからではなく、バリアフリーの観点から考案された北九州市オリジナルのものなのです。 この段差は2cmであり、車いすの通行に配慮していますが、一方、視覚障害者の方で白杖を利用する方は2cmの段差を認識できないという声もあります。そこで、視覚障害者の方にも認識しやすいよう縁石に色をつけ、表面の質感を変えています。また、車いすに配慮し、角の面取り処理もされています。 北九州市に来た時には、ぜひ見てくださいね。ただし、あまり下ばかり見ると危ないですよ。
土木に関わった人なら必ずその名前を知っていると思われる吉田徳次郎博士。博士が行った実験の一つに鰯をコンクリートの中に入れるとどのように変化していくのかを調査したものがあります。 写真は再現実験を行った時のもの。鰯は資料に残されている通りミイラ化しており,植物は混入当時の色を保っていました。 この実験は時代を超えて,私たち技術者に実証することの大切さを伝えてくれているのだと思います。
橋の高欄の両端に立っている柱を「親柱(おやばしら)」と言います。 地域ごとに、特色のある装飾が施されて至りします。 写真は、ロケット発射場のある、鹿児島県内之浦に掛かる橋の親柱です。 発射場へ通じる沿線の橋梁の親柱は科学衛星やロケットの部品をモチーフにしています。 皆さんも、近くの橋の親柱を、意識して眺めると、新しい発見があるかもしれませんよ(^_-)
九州には数多くの石橋が存在しています。実は全国に現存する石橋の90%以上は九州にあるのです。なぜ九州で多くの石橋が架けられたかというと、石橋を架ける技術は、ヨーロッパや中国から長崎の出島を経て伝来したこと、良質の材料(石)が存在することが理由と言われています。時代の変遷により、自動車を通行させる為には、道路の幅員を広げる必要性などから、現代の形式の橋に架け替えられることが多く、主要道路からは姿を消していきました。
陸上競技場もフィールド内は全て土木構造物になります.とても大きな構造物ではありますが,繊細な基準で造られております.例えば,トラック走路の延長でいうと,1mで誤差1mm以内でなければなりません。このように選手の大切な記録をドボクはひっそりと見守っております. また,このトラック走路の色,使い分けに基準はありませんが,赤は興奮色のため短距離走に向いているや,青は鎮静色のため集中力が高まるやリラックス出来るため長距離走に向いているなど,ドボクは,こういった色彩面からも選手を応援しております.
陸上競技場もフィールド内は全て土木構造物になります.とても大きな構造物ではありますが,繊細な技術で造られております.陸上競技場のトラック走路,厚み1mmのウレタン層を重ね塗りしながら、基準値に収めつつ、水溜まりが出来ないよう,入念に施工していきます.特に凄いのが傾斜でして,横方向へは、内側に向かって10cmで1mm傾くようにします.これは水溜まりが出来ないようにするためです.また走る方向へは,1mで1mm以内の傾斜でなければなりません.これは走行条件を統一するためです.このように選手の大切な記録をドボクはひっそりと見守っております.
トンネルの壁面に刻示された数字。実はコンクリートの厚さ(専門的には「設計覆工厚」といいます。)を示したものです。 コンクリートの厚さは、地質の状況によっても変化するため、厚さが変化する箇所に刻字することなっているほか、起点より終点に向かって左側に設置しなければならないと定められています。 こうした情報は、将来、トンネルの補修工事等が必要になった際に役立つものであり、こうした情報を建設した際にきちんと残しておくことも私達土木技術者の大切な役目なのです。
近代以降、各地でコンクリート構造物が造られました。大正~昭和初期には、木橋に代わる最初の永久橋として、多くの鉄筋コンクリート橋が架けられました。これらの鉄筋コンクリート橋には、とても手の込んだ豊かな造形が施されています。特に、橋の四隅にある親柱や側面に連なる高欄には、ユニークな形状をしたものが多く見られます。これらは全て、当時の型枠大工や左官職人による高度な造形表現です。精緻に組み立てられた木製の型枠と、丁寧な鏝仕上げにより造られた多様な形状の親柱や高欄は、見る者を楽しませてくれます。完成から約1世紀が経過したこれらのコンクリート構造物は、ますます風合いを増し、大正ロマンの風情を感じさせます。